私たちの本棚
ほのぼのとした読後感—一人ならじ—山本周五郎 著
喜多 知子
1
1徳島大学医学部付属臨床検査技師学校
pp.267
発行日 1987年3月1日
Published Date 1987/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204024
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私は,ジャンルにこだわらずに読むほうだが,中でも,歴史小説や時代小説が好きである.井上靖の『蒼き狼』や『額田女王』に胸を踊らせ,山岡荘八の『徳川家康』や司馬遼太郎の『坂の上の雲』を読んでは,寝不足になったものである.
一方で,これらとはひと味違う山本周五郎の時代小説の大ファンでもある.長編小説『縦の木は残った』で有名な周五郎であるが,市井の人を主人公にした短編にも,優れたものが多い.封建秩序に縛られつつも,互いの愛情と思いやりによって,幸せの布を織りあげていく彼らの姿は,冬空に静かに瞬く星にも似て美しい.
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