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PIVKA-Ⅱ(protein induced by vitamin K absence-prothrombin)は1976年,Stenflo1)らによって第Ⅱ因子(prothrombin)の末端にあるr-カルボキシグルタミン酸(Gla)がビタミンKの欠乏によってGlaにならず,グルタミン酸(Glu)で存在することが明らかにされた.古くから新生児が出生2〜4日目ごろに突然出血症状をきたすことが知られており,1959年,Gastofssonは無菌ラットで蒸気滅菌したビタミンK不足飼料(ビタミンKは熱に不安定である)で飼育し,動物実験で低プロトロンビン血症になることを証明し,1963年,HemkerらはビタミンK欠乏によって凝固異常を示すpreprothrombinemiaを指摘,1968年2)PIVKAsによる凝固阻害を報告した.
凝固第Ⅱ,第Ⅶ,第Ⅸ,第Ⅹ因子などはビタミンK依存性凝固因子であり,ビタミンK欠乏によって,異常型の凝固因子,すなわちPIVKAsの血中出現が観察される.また,これらの因子は肝依存性凝固因子であり,肝細胞のマイクロゾームで前駆体ポリペプチドとして蛋白合成される.ビタミンKの存在でグルタミン酸残基(Glu)がr位炭素のカルボキシル化でGla(r-carboxyglutaminic acid residue)に転換され,血中に正常凝固因子として出現してくる.ビタミンKはこのカルボキシル化反応に必要なもので,カルボキシル化酵素(r-carboxylase)の活性を促す3).通常,用いられているDicumarolの薬効はこのr-carboxylaseの活性を阻害し,PIVKAsの出現による抗凝固作用を示す.プロトロンビンの場合,1分子中に10個のGlaをもち,Ca2+イオンと強い結合を示し,リン脂質と反応する.しかし,GluのままのPIVKA-Ⅱの場合,Ca2+イオンとの結合ができず,凝固活性を示さない.
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