技術講座 病理
アビジン・ビオチン・グルコースオキシダーゼ複合体法
埴岡 啓介
1
,
中浜 晶夫
1
,
浦野 順文
1
1東京大学医学部病理学教室
pp.982-986
発行日 1986年8月1日
Published Date 1986/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203812
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ペルオキシダーゼ・抗ペルオキシダーゼ複合体法(PAP法)やアビジン・ビオチン・ペルオキシダーゼ複合体法(ABC-PO法と略す)を用いた免疫組織化学が広く行われるようになり,豊富な種類の抗血清が市販されていることとも相まって,今日ではこれらの方法は病理検査の日常手技の一つとして取り入れられている.一方ではモノクローナル抗体の作製技術が普及し,実に多種多様な抗体が開発され,市販の抗体の種類も年々増加している.これらの中には,ある種の悪性腫瘍に特異的であるとか,腫瘍細胞の起原や,その分化の方向・段階を鋭敏に示すものが少なからず含まれており,病理診断においても欠かすことができない.
こうしたモノクローナル抗体は今後増加し,その日常検査に占める重要性はますます高くなると思われる.しかし,これら抗体の抗原決定基(epitope)はホルマリンなどの固定液,アルコールやキシレンなどの有機溶媒に対して不安定なことが多く,日常使用するパラフィン切片では失活してしまって染まらないことが意外に多い.このためモノクローナル抗体を用いた染色では,新鮮凍結切片を用いざるをえないことがしばしばである.
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