技術講座 病理
モノクローナル抗体を用いた蛍光抗体重染色法
服部 進
1
,
阿部 雅明
1
,
白井 俊一
1
1順天堂大学病理学
pp.151-156
発行日 1986年2月1日
Published Date 1986/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203573
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1942年Coons1)らが蛍光(fluorescein)を標識した抗体を用いて肺炎球菌を観察したのが,蛍光抗体法の始まりと思われる.蛍光顕微鏡下に観察される菌体はまさに形態学への侵入であり,抗原抗体反応の病理組織学分野への広がりであった.その後1954年Watsonらの考案による間接法が開発され,その後,酵素抗体法,PAP法などが考案されてきている.1975年,KöhlerとMilsteinらによりモノクローナル抗体の生産法が開発された.この方法は免疫学に一段と進歩をもたらす結果となっているが,このモノクローナル抗体を免疫組織学的分野で利用するには,モノクローナル抗体が単一の抗原決定基としか反応しないためにいくつかの増感法が考案され,その結果,BA法,ABC法,PAP法などが現在広く用いられるようになっている.
病理学の分野においても現在,蛍光抗体法は多大の貢献をしている.例えば,腫瘍マーカーの検出,免疫細胞亜系の同定,酵素やホルモン産生細胞の同定,組織に沈着する免疫複合体の検出などである.ところで,蛍光抗体法では二つの抗原が同一の細胞および組織上にあるのか,隣接する細胞にあるのか,などの点の解析がよく求められる.一般的にはこの際,連続切片を用いた解析がなされてきたが,これを同一切片上で観察可能にするには二つの抗原を同一切片上で染め分ける重染色の必要性が生じる.そしてこの反応系が確固たるものであれば解析の結果も説得力あるものとなる.
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