検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
フェニルケトン尿症の検査法
周山 逸人
1
,
一色 玄
1
1大阪市立大学小児科
pp.1031-1035
発行日 1985年12月1日
Published Date 1985/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203520
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フェニルケトン尿症(以下,PKU)はフェニルアラニン(以下,Phe)をチロシン(以下,Tyr)に転換するフェニルアラニン水酸化酵素の先天的欠損によって起こる疾患であり,常染色体性劣性遺伝型式をとる.体内にはPheが蓄積し,尿中にはPheのほか,Phe誘導体が大量に排泄される(図1)1).臨床的には精神薄弱,痙攣などの中枢神経障害,赤毛,色白などのメラニン色素欠乏,また体液中のフェニル酢酸の増加によるネズミ様体臭,尿臭が特徴である.
本症は脳障害をきたす以前に発見し,低Phe食で治療することにより諸症状を予防することができるため,我が国においては1977年(昭和52年)10月からGuthrie法2)を用いる新生児マススクリーニングが開始された.このような新生児マススクリーニングが実施されることによりもたらされた新知見の一つは,PKU以外の高フェニルアラニン血症の存在である.Guthrieは,PKU 2に対し約1の割合で高フェニルアラニン血症が発見されると述べている1〜2).この高フェニルアラニン血症は,普通食下での血中Phe濃度が持続して4mg/dl以上のものと定義されているが,単一の疾患単位ではない.この疾患群に含まれる諸疾患とPKUとの鑑別診断3)は治療上,不可欠のものである.
以下,PKUの病態と高フェニルアラニン血症との鑑別についての概略を述べる.
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