Japanese
English
特集 精神薄弱
フェニルケトン尿症の臨床
Clinical Aspects of Phenylketonuria
高井 俊夫
1
,
大浦 敏明
1
Toshio Takai
1
,
Toshiaki Oura
1
1大阪市立大学医学部小児科
1Department of Pediatrics, Medical School, Osaka City University
pp.111-123
発行日 1968年4月25日
Published Date 1968/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904487
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I.歴史
フェニルケトン尿症(以下PKUと略記)は1934年ノールウェーのFöllingによつて初めてImbecillitasphenylpyruvicaなる名称で記載された,精神薄弱を伴う先天性アミノ酸代謝異常症である1)。Jervis2)はついで本症が常染色体の劣性遣伝性疾患であり,患者の体内に多量のフェニルアラニンが蓄積していることを明らかにした。彼はまた本症の代謝障害は,フェニルアラニンよりチロジンへの酸化過程にあり3),患者の肝組織中にはフェニルアラニン水酸化酵素が欠如していることを証明した4)。Föllingの発見以後約20年間は,このように学問的興味の対象であるにすぎなかつたが,1953年Bickel5)は,本症患者に低フェニルアラニン食が治療効果を有することを最初に報告した。それ以来,世界各地でその効果が追試確認され,PKUは,いわゆる治療可能な先天性代謝異常中の代表的疾患の一つとなつた。わが国では岸本,広瀬6)が1950年に報告したのが第1例で,現在ではおそらく70例をこえているであろう。ことに最近数年間における報告の増加はいちじるしい。治療食餌を用いた最初のを報告は1961年山本ら7)によつてなされ,ついで同年著者ら8)は第2,第3例を報告し,そのうち1例はわが国最初の正常知能例であることを述べた。
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