特集 遺伝と臨床検査
II DNA診断
2.DNA診断の応用
3)フェニルケトン尿症
岡野 善行
1
Yoshiyuki OKANO
1
1大阪市立大学医学部小児科
pp.94-97
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901287
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●はじめに
フェニルケトン尿症(phenylketonuria;PKU)は肝臓のフェニルアラニン水酸化酵素(phenylalaninehydroxylase;PAH)の先天的欠損によって起こるアミノ酸代謝異常症の1つで,結果として体内にフェニルアラニン(phenylalanine;Phe)が蓄積され,知能障害などの中枢神経障害,赤毛,色白などのメラニン色素欠乏を引き起こす1).常染色体劣性遺伝形式で発現し,両親は通常ヘテロ接合体である.発生頻度は,欧米で1/10,000人,中国で1/16,000人,日本で1/110,000人と地域により大きな差があるが,先天性代謝異常症の中では比較的頻度の高い疾患である.治療と診断は現在,ガスリー法での新生児マススクリーニングによる早期発見と低フェニルアラニン食による早期治療で中枢神経障害などの予防に効果を上げている.
一方,組換えDNA技術の進歩とその応用は細胞が持つ遺伝情報を直接解析することを可能とし,先天性代謝異常症の診断と治療に大きな影響を与えている.PKUの欠損酵素であるPAHは肝臓にのみ局在するため,白血球,羊水細胞,絨毛細胞などで解析される保因者診断や出生前診断は不可能と考えられていた.1983年,Wooら2)によって初めてラットPAHcDNAを利用したrestriction fragment Iength polymor-phism(RFLP)の解析によるPKUの出生前診断が報告され,以後種々の遺伝子レベルでの解析が進められている.
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