- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
合成ペプチド基質の由来3)
フィブリノゲンがトロンビンによってフィブリンを形成するときに,まずフィブリノゲンからフィブリノペプチドAを遊離し,フィブリンモノマーとなる.Blombäck,Iwanaga,Gröndaleら(1968)は,このフィブリノゲンから分離して出てくるフィブリノペプチドAのアミノ酸配列を決定した.そこでフィブリノペプチドAに類似したペプチドを合成すれば,それはトロンビンに特異性を有する基質となりうるということから,どのアミノ酸がトロンビンに対して特異的な情報を与えるか,という研究が行われた.そしてフィブリノペプチドAのアミノ酸配列で16番目のArg(アルギニン)と9番目のPhe(フェニルアラニン)が,トロンビンの酵素作用に重要な役割を果たしていることが解明された.このようにトロンビンがフィブリノゲンのアミド結合を加水分解することに注目し,Phe-Val-Argに発色原として,p-ニトロアニリン(pNA)を結合させたS-2160:Bz-Phe-Val-Arg-pNA・HCIが最初に発表された合成ペプチド基質であった(図1)4).
この基質は,N末端のアミノ基にベンゾイル基(B2-)を結合させてアミノの働きをマスクし,C末端のカルボン酸にpNAを結合させている.またクロモザイムTH:Z-Gly-Pro-Arg-pNA-HCl,S-2238:H-D-Phe-Pip-Arg-pNA・2HCl,ペプチド-MCA基質(α-トロンビン):Boc-Val-Pro-Arg-MCAなどがある.またプロトロンビン活性においてプロトロンビンの活性X因子(Xa)による開裂部位は,プロトロンビンの分画-2からトロンビンAの部位と,トロンビンAとBの部位である(図2)5),この合成基質にはS-2222:Bz-Ile-Glu-Gly-Arg-pNA・HCl,ペプチド-MCA基質(Xa因子:F. Xa):Boc-Ile-Glu-Gly-Arg-MCAなどの構造を示すものがある.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.