今月の主題 止血機構とその異常
出血・凝固検査
合成基質による凝固プロテアーゼの測定法
川畑 俊一郎
1
,
岩永 貞昭
1
1九州大学理学部・生物学科
pp.261-263
発行日 1986年2月10日
Published Date 1986/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220221
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血液凝固プロテアーゼは,そのほとんどが酵素活性を示さないチモーゲンとして存在するが,出血などの異常時に次々と活性化され,凝固反応を開始する.これらプロテアーゼの活性は,従来から凝固因子の欠損血漿を使用し,フィブリンクロットの形成時間を指標として測定されてきたが,簡便さや精度,感度の点から,今日ではペプチド合成基質が広く用いられるようになった.
凝固プロテアーゼは,すべてセリン残基を活性中心にもつ,いわゆるセリンプロテアーゼの一種であり,トリプシンと同様に,P1サイトにArgやLys残基を含む-P3-P2-Arg-↓P′1の結合に高い親和性を示す.しかし,凝固プロテアーゼの作用特異性は非常に高く,特定の-Arg-P′1-結合を切断する点で消化性のトリプシンとは異なる.また,切断周辺のP2,P3サイトのアミノ酸残基の影響を強く受ける.すなわち,凝固プロテアーゼの高い基質特異性は,各酵素がP1サイトだけでなく,その周辺のアミノ酸残基をも厳密に認識していることを示唆する.ペプチド合成基質は,こうした凝固プロテアーゼの基質認識の多様性をもとに開発されてきた.それゆえに,プペチド基質は,天然基質の切断部位のアミノ酸配列を基礎に合成されることが多い.Pサイトの数を増すほど特異性の高い基質になる可能性はあるが,合成上の制約や溶解度,安定性などを考慮して,主にトリペプチド基質が用いられてきた.
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