技術講座 血液
溶血に関する検査1—浸透圧脆弱試験
大庭 雄三
1
,
宮地 隆興
1
1山口大学臨床検査医学
pp.413-418
発行日 1984年5月1日
Published Date 1984/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203031
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赤血球の浸透圧脆弱性試験は19世紀末に考案されたという.Chanel(1880)は未溶血赤血球の数を算定する定量的方法を用いた.この方法は1935年WhitbyおよびHynesによって,それぞれ独立に再考案された.Hamburger(1883)は肉眼観察によって溶血開始および完了の食塩濃度を決定する簡易定性法を用いたが,これを原形として,上清の肉眼比色法(ArrheniusおよびMadsen,1903;Hasting,1921)を経て,より精密な光電比色法(WaughおよびAsherman,1938;Hunter,1940)へと発展した.Parpartら(1947)1)は浸透圧溶血の時間的経過,温度およびpHの影響を検討して,今日の浸透圧脆弱性試験を完成した.
赤血球は中央部が薄い円盤形の,体積/表面積比の小さい柔軟な構造物であるが,低張食塩水中では水を吸い込んで体積だけを増し,体積/表面積比の最も大きい球形になって溶血する.したがって,浸透圧脆弱性は赤血球の体積/表面積比をよく反映する.温度が高いほど浸透圧平衡または溶血に達するまでの時間が短縮するが(Q10≒2.6),脆弱性(平衡時における溶血量)は減少する.pHが低いほど脆弱性は増加する.
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