技術講座 血液
出血時間
新倉 春男
1,2
1昭和大学
2藤が丘病院内科
pp.34-38
発行日 1983年1月1日
Published Date 1983/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202668
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出血時間とは
止血機序に関与する因子として,毛細血管の機能,血管周囲組織の性状,血小板,凝固因子,線溶系があり,これらのうちのいずれかの異常によって出血傾向が現われる.特に血小板は毛細血管機能の維持と一次止血に不可欠の血球であり,われわれが日常遭遇する出血傾向の多くは血小板の異常,特に血小板減少によるものである.正常な状態では血液中の血小板は血管壁への粘着あるいは血小板相互の凝集を起こすことはないが,血管内皮の損傷により内皮下組織が露出されると,血小板はそれらの組織成分(コラーゲン,基底膜,マイクロフィラメント)に粘着する.さらに粘着した血小板からアデノシンニリン酸(ADP),セロトニンなどが放出され,血小板凝集が起こる.また損傷局所の組織や赤血球からのADPも加わり,血小板の凝集は促進される.
一方,血小板から放出された血小板第3因子をはじめとする血小板因子と損傷部からの組織トロンボプラスチンにより,プロトロンビンはトロンビンに転化し,粘着凝集した血小板はトロンビンの作用で粘性変態を起こす.粘性変態を起こした血小板は血小板血栓となり,血管損傷部を覆い止血される(一次止血).血小板第3因子は内因性凝固機序を促進し,外因性凝固機序と相まって血小板血栓の周囲にフィブリンを形成し,強固な凝固血栓が完成する.ついで血小板内のトロンボステニンによって血栓は収縮する(血餅収縮).さらに,血栓はしだいに器質化され,血管内皮も修復され,不要となった血栓は線溶現象により溶解し,血管は正常な状態に復する(永久的止血)(図1).
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