マスターしよう基本操作B
スパイロメトリー
瀧澤 弘隆
1
1千葉大学医学部肺癌研究施設
pp.921-926
発行日 1982年10月1日
Published Date 1982/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202608
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肺の呼吸機能は,吸入気を肺胞まで導入し呼気を体外に排出する換気機能,肺胞で02とCO2との交換を行うガス交換機能,ならびにO2およびCO2の血中運搬にあずかる循環機能,の三つの要素から成立っている.今回は呼吸機能検査のうちで,もっとも基本的な換気機能検査を中心に説明する.
スパイロメトリーは,静的な肺気量分画測定と動的な努力性呼出曲線計測とに分かれ,以前はBenedict-Roth型スパイロメーターが使用されていた.同機は原理・構造的に簡明であるが,チャートに描出された呼吸曲線を正確に計測し,さらにその数値をATPS(ambient temperature and pressure saturated with water vapor:測定時の室温・大気圧下,水蒸気で飽和された状態,すなわちスパイロメーター内条件)からBTPS(body temperature and pressure saturated with water vapor:測定時の大気圧下で室温を体温に補正し水蒸気飽和した状態,すなわち生体内条件)に換算しなければならず,その処理にかなりの習熟と時間とを要していた.しかし,近年電子工学の導入により上述の物理的条件や年齢,身長,性別など被検者の身体的条件を測定器に打込んでおけば,コンピューター部分が測定値を目的とする表現で自動演算表示する機種が開発され,その普及とともに省力化がはかられるようになってきている.また最近は,気量ではなく気速計や熱線流量計により気流量を求め,これを積分して気量を測定するタイプが,小型で取り扱い保持の容易であることから普及してきている.
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