病気のはなし
肺癌
成毛 韶夫
1
1国立がんセンター呼吸器科
pp.858-862
発行日 1982年10月1日
Published Date 1982/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202592
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肺癌とは
大部分は肺の気管支粘膜上皮を母地として発生する癌であるので,気管支癌ともいう.いくつかの原因と考えられているものがあり,その中でもっとも重要なものが喫煙とされている1〜7).タバコ自体が肺癌の原因というのではなく,タバコの煙の中のタールに発癌性があるわけである.事実タバコを全然吸わない人に比べて,1日10本吸う人は3倍,20本吸う人は4倍,40本吸う人は5倍の割合で肺癌になっている.すなわち紙巻タバコの喫煙は,男性では明らかに肺癌との因果関係があり,その影響はいかなる要素よりも大きいこと,喫煙期間の長いほど,また1日の喫煙量が多いほど,肺癌になる人が増えること,逆に喫煙を中止すると減少することなどがわかっている.
しかしタバコを多量に吸っても肺癌にならない人もいるので,この理由を人体に入ったタールを細かく分解するAHHという酵素の働きが人によって異なるために,肺癌になる人とならない人の個人差が生じると説明している報告8,9)もある.喫煙のほかに大気汚染を起こす工場の煤煙,自動車の排気ガスや舗装道路からのガス中にも,ベンツピレン,ニッケル,砒素化合物,コールタール,すす,石油産物,アスファルトのちりなどたくさんの発癌物質が含まれているし,放射能も肺癌と関係していると考えられている.
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