今月の主題 胸痛の診かた・とらえかた
胸痛を伴う主な疾患
肺癌—Pancoast tumorを含む
成毛 韶夫
1
1国立がんセンター外科
pp.354-355
発行日 1978年3月10日
Published Date 1978/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207780
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肺癌における胸痛の頻度
肺に原発する癌は,60〜70歳代の男性に多く,40歳以下の年齢では非常に少ない.肺癌は気管支粘膜上皮から発生するのが大部分であるから,主な症状が気管支の刺激症状であることは当然のことであるが,胸痛も肺癌にかなりみられる症状の一つである.
肺癌患者が初発症状として胸痛を訴える頻度は,Mason(1949)が1000例について24%,Arielら(1950)が1109例について25%,Taylorら(1950)が1952例について22%,La Due(1955)が811例について23%と報告している.国立がんセンターにおける切除467例についての肺癌の初発症状では,咳嗽,血疾,喀疾,発熱についで多く,8.6%であった(図1).すなわち,初発症状としての胸痛の頻度は8〜25%である.病期の早いものでは胸痛も激しいものではなく,むしろ痛みまたは不快感は漠然としており,主として患側の異和感,重圧感,鈍痛程度のもので,その原因は腫瘍の増殖進展による気管支の閉塞,胸膜浸潤,縦隔への癌浸潤,肺の二次感染,気管支の痙攣などによるものと考えられる.
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