コーヒーブレイク
マスコミのオーバーな宣伝
T. S.
pp.937
発行日 1981年12月1日
Published Date 1981/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202397
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夏の暑い日に,1週間ほど前から,微熱,ときに中等度の発熱があって,少しずつおかしなことを言うので診てくれという電話があった.患者は60歳の男性であり,多分に脳炎かも知れないと想像しながら往診してみると,確かにボーとした顔で臥床していた.よくみると全身の皮膚,特に胴体の皮膚に,隆起した多少紫褐色がかった大小さまざまの不規則ないぼ状のものを見つけた.このいぼ状のものは,痛くもかゆくもないので,何日ごろから出来たか分からないが最近のものであろうと言う.早速,外科医を呼んで,いぼの一つを採ってもらい標本を作ってみるとadenocarcinomaであろうと言う.どこが原発巣か不明であるが,皮膚への転移であろうということであり,早速入院をすすめた.入院後は意識も不明瞭で,重篤な症状を示し,多分に脳への転移も考えられた.
化学療法及び免疫療法しか方法がないと考え,そのようにされていたが,家族の中に高校の数学の先生がいて,60Coをかけてくれといってきた.癌の全身転移のときに,それは適症でないと反論すると,その数学の先生は,かつて週刊誌で60Coが出現し,癌が征服されると書いてあるのを読んだことがあると言う.
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