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偽膜性大腸炎(Pseudomembranous colitis,PMC)は,腸管上皮細胞壊死及び白血球,フィブリン,壊死産物などから成る偽膜の形成を見る大腸の非特異的炎症である.本疾患は,1893年Finney1)が初めて胃腸吻合術後の重篤な合併症として報告したが,殊に近年はリンコマイシン(LCM),クリンダマイシン(CLDM)をはじめとする種々の抗生剤投与による本疾患が多数報告されている.
本疾患の発症原因として,黄色ブドウ球菌,抗生剤,腸管の虚血等が挙げられていた.1977年Larsonら2)がPMC患者糞便中に細胞障害性毒性を有する物質が存在することを初めて明らかにし,その後本毒性がClostridium sordellii抗毒素血清により中和されることが判明し,本毒素産生菌の検索がなされた.一方Bartlettら3)はCLDM投与により腸炎が発症したハムスターの腸管内に同様の毒性物質を証明し,初めてClostridium difficileを分離した.その後PMC患者糞便からもC. difficileが分離され,かつ分離したC. difficileの培養液中にC. sordellii抗毒素血清により中和される細胞障害性毒素が存在することが多数の研究者により明らかにされ,有毒C. difficileがPMCの重要な原因の一つとして認められるにいたった4).現在抗生剤投与によるPMCあるいは下痢症においては本菌の検索が望まれている.C. difficileの分離・培養はC. Perfringensなどに較べると容易であるとは言えないが,一定の条件と注意さえはらえば取り扱いの比較的容易な菌であり,一般検査室での検索が望まれる.
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