最近の検査技術
サラセミアの診断—グロビン鎖生合成試験
柴田 進
1
,
原野 昭雄
2
1川崎医科大学
2川崎医科大学生化学
pp.1038-1044
発行日 1980年12月1日
Published Date 1980/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202188
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サラセミア(Th)は,ヘモグロビン遺伝子の欠陥によりグロビン分子を構成するα鎖あるいは非α(β,γ,δ)鎖のどちらか一方の生成が抑制され,α/非α鎖産生の不均衡を来し,正常ヘモグロビンの生成が低下し,血液ヘモグロビン組成のねじれと溶血亢進を呈する一群の小球性低色素性貧血である.中等症及び重症例では,骨髄における無効造血,補償的骨髄過形成,髄外造血,脾腫,末梢血液の奇形赤血球症(標的赤血球など)が認められる.生成を抑制される鎖の種類に注目して,αTh,βThなどの症型を分類する.
Thは地中海,アフリカ,東南アジア地方に多くみられる土着性疾患だと思われていたが,調査が進むにつれ世界の各地で検出されるようになった.日本では1960年にこの疾患患者の第1例が発見1)されて以来,関東2),中部3,4),九州・沖縄5,6)の諸地方から報告が続いている.それらはほとんどすべてβThであり,αThは日本在住外国人(留学生)や外国人との間の混血児について観察されている7).
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