コーヒーブレイク
可愛想
S. T.
pp.941
発行日 1979年11月1日
Published Date 1979/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201956
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今年の夏ほど動物が世間を騒がせたことも珍しい.その一つは千葉県の神野寺のトラ騒動である.,結局は逃走した2頭とも射殺されて幕を閉じたが,最初のトラを射殺した猟友会員のところには脅迫の電話や手紙が殺到したということである.たしかに,殺されたトラの姿や顔がテレビに大写しにされると,罪もないのに可愛想だとだれしもが思ったことであろう.なぜ麻酔銃を使用して捕獲できなかったかという疑問も湧く.しかし,やはり相手は猛獣である.付近住民のこのうえない不安な状態を考え,麻酔銃が少なかったこともを考え合わせれば,射殺以外に手段はなかったと思われる.問題は猟友会員に対する脅迫電話や手紙による脅しである.殺された動物が可愛想と思う心はだれしも同じであり,射手も恐らく同じ気持であったに違いないと思う.立場上やむを得ず社会的な責任のうえでとった行動に対し,これを脅迫することは,真の動物愛の精神に通じるものでは決してない.
もう一つの出来事はパンダの病死である.中国から来たとき以来,まさに国賓待遇の扱いで,人気も大変なものであった.ランランが重症に陥って死に至るまでのマスコミの報道ぶりもまた異常なほどであった.
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