増刊号 血液検査実践マニュアル
Part 5 凝固・線溶検査
5.特殊検査
11)可溶性フィブリン
岡嶋 研二
1
1熊本大学医学部臨床検査医学講座
pp.901-903
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905504
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検査の目的と意義
血栓症の臨床症状や出血傾向,また凝固時間の延長や血沈の遅延,さらに血小板数の減少などの播種性血管内凝固症候群(DIC)の存在を疑わせる所見が認められれば,微小血栓形成のマーカーである可溶性フィブリンモノマー複合体や可溶性フィブリン濃度を測定し,上記の病態診断のための重要な所見とする.
血栓症の病態では,いろいろな原因で血液凝固系が活性化され,その結果,トロンビンが生成され,血栓が形成される.フィブリノゲンにトロンビンが作用すると,フィブリノゲンのAα鎖のArg16-Gly17間の結合が切断され,アミノ末端から16個のアミノ酸からなるペプチド(フィブリノペプチドA)が放出され,desAA-fibrin(フィブリンI)が形成される.さらに,トロンビンの作用により,フィブリノゲンのBβ鎖のアミノ末端のArg14-Gly15間の結合を切断し,14個のアミノ酸からなるペプチド(フィブリノペプチドB)が放出され,desAABB-fibrin(フィブリンII)が生成される.フィブリンIIでは,AαおよびBβのアミノ末端に,それぞれ新たにAおよびB重合部位が露出され,それぞれフィブリノゲンのAαおよびBβのカルボキシ末端と結合し,フィブリノゲンと可溶性複合体を形成する.形成されたフィブリンの濃度がフィブリノゲン濃度を超えると,フィブリンが重合し,不溶性フィブリンを形成する.
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