増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論
1.血液検査
5 可溶性フィブリン
尾川 智美
1
,
北島 勲
2
1富山大学附属病院検査部
2富山大学医学部臨床分子病態,検査学講座
pp.1099-1100
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101059
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はじめに
血栓症や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation,DIC)において,患者の凝固・線溶状態把握は治療法選択などの臨床的に極めて重要である.トロンビン・アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex,TAT),プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2),フィブリノペプタイドA(FPA),Dダイマーなど多くの凝血マーカーが現在臨床現場で利用されているが,どのマーカーが有用性を示すのか疾患により評価が一定していない.近年,モノクローナル抗体IF-43により可溶性フィブリン(soluble fibrin,SF)を特異的に検出することが可能となった.IF-43はフィブリンモノマー(fibrin monomer,FM)1分子がフィブリノゲン(fibrinogen,Fbg)2分子と結合した,SF形成時にEドメイン上に出現する抗原決定基を認識する.SF測定することにより,血中でのトロンビンが活性化状態,すなわち,Fbgがフィブリンへ変換される初期段階を検査できる.さらに,トロンビンの生体内活性化状態を迅速に診断できることのみならず,SF自体が新しく形成される血栓量を反映する.したがって,SFは血液凝固亢進状態を示す優れた分子マーカーと評価できる.
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