コーヒーブレイク
弾力性
I. S.
pp.838
発行日 1979年10月1日
Published Date 1979/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201931
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肺の生理を勉強していると,エラスティシティーやコンプライアンスという用語がでてきて,しかも後者は前者の逆数ということで,少しく混乱する.まして,教える立場ということになると,自分がよく分かっていないといけないし,更にはその混乱の原因も分かっていないといけない.そこで考えてみると問題は,"弾力"という言葉そのものにあることが分かる,手近の辞書をひいてみると,弾力は"弾性体が外力に抵抗して元にかえろうとする力"とされているが,続いて"弾力性"として,状況の変化にすなおに適応できる力(性質)にも例えられる,例は"弾力性に富む考え方"とある.この両者は矛盾していて,同じ言葉で反対のことを言っている.バネが強ければ,伸ばされたときの元にもどる力も強いわけで,物理でフックの法則として習ったように伸ばされ方に比例して強い張力が発生する.したがって弾力性に富むと言えば強い力で元にもどる性質のことになる.一般用法では弾力性に富めば,反対に"いいなりになって,適当に変更する"ことを言っている.
英語でもこの混乱はあるらしく,elastic temperamentというのは,"今ないた鳥がもう笑った"というような性質を言う.
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