特集 たばこ研究
価格誘導政策のターゲットは誰か―価格弾力性をめぐる研究成果と今後の政策展望
細野 助博
1
1中央大学大学院公共政策研究科
pp.555-559
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101360
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社会的規制への舵切り
「たばこの消費などが健康に及ぼす悪影響から,現在と将来の世代を保護するための国際協力」を目的とした世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組み条約(FCTC)」は,2005年2月に発効された.この条約の締結国は,①公共の場での分煙,②たばこ製品の包装,注意文言などの措置,③たばこ製品の広告や販促活動の包括的禁止,④未成年者の喫煙禁止措置などの主要義務が課されることになった.
規制緩和の潮流にあったわが国が,2001年「たばこ」に関する社会的規制の強化に大きく舵を切ったのは,WHOを中心とした国際的な動きと同時に,マクロ経済的な意味合いの変化があったからだ.かつて日本は,世界の中ではたばこ規制に対して消極的な姿勢を堅持することで有名だった.政策的に大きな転換が行われることになった背景には,国際的な圧力と同時に,たばこ販売からの税収入や産業関連の収益約3兆円と,国民医療費に占めるたばこ関連の超過負担や人的経済的損失7.3兆円という概数が示すように,マクロ的な費用便益上の逆転が明確になったことから,行政当局も政策転換を行ったことが挙げられよう(「米国における同様の動きに関して」8)フリッチュラー,1995).
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