病気のはなし
ベーチェット病
清水 保
1
,
橋本 喬史
1
1帝京大学第2内科
pp.608-612
発行日 1979年8月1日
Published Date 1979/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201887
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ベーチェット病の概念と疫学
ベーチェット病(ベーチェット症候群)は,はじめ1937年トルコ,Istanbul大学皮膚科教授HulusiBehcet(1889〜1948)によって口腔粘膜,眼部,外陰部に反復性に出没するアフタ性潰瘍を伴う疾患で,ウイルスによる新疾患として報告された.彼の当初の記載は,その後の臨床観察症例が増加するに伴ってしだいに訂正され,その3主徴とするものは口腔粘膜の再発性アフタ,外陰部潰瘍と眼病変としてはブドウ膜炎であるとされ,かつ,ウイルス起因性も多くの追試研究によってむしろ否定的見解が支配的となっている.同様の症例は既にBehcetの報告以前にも日本(1924年),ギリシャ(1931年),イギリス(1934年)などでも報告されているが,3主徴を挙げて1独立疾患として詳しく記載したBehcetの名を冠してベーチェット病もしくはベーチェット症候群と呼ばれている.
この疾患は,初めは地中海沿岸,中近東諸国(トルコ,ギリシャ,チュニジア,エジプト,イタリーなど)に多いとされたが,特に第二次大戦以後は東洋,特に日本に著しい増加が注目されている.1959年ごろから日本において急増多発傾向を示し,世界諸国にその比をみない発症例がみられ,全国の患者数は推定約8,500名(1972年度)とされている.
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