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1.異好性抗体(heterophile antibody)
Paul-Bunnell反応は異好性抗体試験とも言われている.PaulとBunnellが1932年に報告した反応で,Davidsohn吸収試験を加えて行うのが正式となっている.その理由は,PaulとBunnellの原法は患者血清の倍数希釈液にヒツジの赤血球を加えその凝集素価をみて,伝染性単核(球)症(infectious mononucleosis,以下IMと略す)の診断に役立てようとしたものであるが,ヒツジの赤血球に対する凝集素はIM以外にも血清病で極めて高い値が示され,その他若干の疾患でもかなりの高値を示すことがあり,IMの診断には吸収試験が必要なためである.
原著の題名は"IMにおける異好性抗体の存在"となっている.異好性抗体とは異原性抗体,異類性抗体とも呼ばれ,Forssmanが"ヒツジの赤血球を使用しない高価な特異的溶血素の作成―異類性抗体の学説に対する補遺"という論文において記載したもので,"系統発生学的に類縁関係の遠い動物の抗原と作用する抗体"という意味であった.例えば腸チフス菌に対する免疫血清が,腸チフス菌と近縁なパラチフスA菌を凝集したりするのは同類反応であるが,Forssmanはモルモットの臓器(肝,腎臓など)の抽出液をウサギに注射して,ヒツジの赤血球をウサギに注射して得たのと同程度の抗体価の高いヒツジの赤血球に対する溶血素を作成しうることを発見した.ヒツジとモルモットは系統発生学的に類縁関係は遠いので,異類性または異好性抗体と呼んだ.これはヒッジの赤血球とモルモットの腎臓や肝臓との間に共通した抗原(これを共通抗原または交差抗原という)が存在するためである.この抗原を後の学者はForssman抗原と命名し,それに対する抗体をForssman抗体と呼んだ.
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