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中央検査部でも,医学部の学生に対しての教育を負担すべきであるということで,学生に対する講義と実習を引き受けることになった.ところで講義のほうはともかくとして,1年間を通して,4人ずつ1週間の実習は,引き受けてみて,大変な仕事だと,今更ながら"教育という仕事"を見直すことになった.なにしろ数人の教員しか動かせないので,更に数人の技師諸君に手伝いを依頼して,まあまあなんとか軌道にのせて,1学期が終わりに近づいた.緊急検査は実際にやっている人に教えてもらおうというのであるが,多少の問題もあった.
私が医学部の学生であったころや,その後生理学教室に入って学生の実習を担当したころを考えると,医学生の教育はほとんどすべて"医師である先生"によってなされていた.医師がそして医師のみが医師の教育に当たって,いわば医師以外の人に物を尋ねることなく医師に育ってきた."人間の中で一番優れた人が医師になり,それ以外の人が医師以外の職業についている"といった思想の持ち主も周囲にたくさんいたように思う.自負は大変結構だが,他の職種を何も知らないし評価もしないという有様で,世の中をうまくわたって行けたとすれば,まぐれの幸いであろう.まして医療自体も複雑化して,看護婦,検査技師,レントゲン技師,薬剤師,事務員などなど,たくさんの職種の人と共同で業務をしてゆかなければならないとすれば,自分の殻に閉じこもることもできないことになっている.アメリカでは患者に対するアプローチの仕方一般についての講義など,医学生と看護学生とを一緒にして教育している所もある.学生時代から他の職種とのふれ合いを持たせるということも,これからの医師の教育(undergraduateの)に必要なのではあるまいか.
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