技術講座 病理
検体の処理法・5—肺
河又 國士
1
1中央鉄道病院中検
pp.68-69
発行日 1974年8月1日
Published Date 1974/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200546
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生命の維持に不可欠な酸素を体内に取り入れ,物質代謝の結果産出される炭酸ガスを体外に排出するいわゆるガス交換の場が肺である.つまり肺は他の臓器と比較し例外的に多量の気体を含有する臓器である.組織中に多量の気体を含むことは,病理組織標本を作製するうえで固定,脱水,透徹,包埋に使用する各種薬剤の組織内への浸透を妨げ,細胞組織の変性を促進する.この難点を無視してはよい標本作製は全く望めない.
肺の主要病変には炎症,腫瘍,退行性病変,進行性病変,循環障害などがある.この中で病理学的検索の目的で手術材料として検査室に提出されるものに,炎症では肺結核,肺化膿症や肺真菌症,腫瘍では肺癌(気管支癌),その他塵肺や肺気腫などがある.また循環障害としての肺塞栓症やうっ血肺は剖検例で見られる.
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