病人と病気と病院
放射線部
大沢 忠
1
1自治医科大放射線医学
pp.12-15
発行日 1974年5月1日
Published Date 1974/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200443
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放射線医学とは
放射線医学はまだ70余年の歴史しかない若い学問である.1895年レントゲンがX線を発見するとただちにその診断への利用の可能性が注目され,1896年にはたとえばダウン症候群(蒙古症)の手のX線変化など,いくつかの報告がすでに現れている.さらに1896年のベクレルによる放射能の発見,1898年のキュリー夫妻によるラジウムの発見と続き,同時にX線やラジウムから出る放射線はある種の腫瘍に著明な効果のあることがわかってきた.以上の歴史的な経過からもわかるように,放射線医学はX線診断,放射線治療,核医学の3つの臨床医学と,放射線生物,物理などを含む基礎放射線医学とからなっている.
まずX線診断について見ると,人体をX線が通過する際,空気を含んだ肺,気管,実質性臓器の肝,腎,カルシウム,リンなどを含む骨組織などの間に吸収の差ができ,それが濃度の差としてX線フィルム上に記録され,生体を傷つけることなく正確な病理解剖的変化の観察が可能となるわけである.また新たに濃度の差を作り出しX線検査の応用範囲を広げるため空気,炭酸ガス,酸素などの陰性造影剤や,硫酸バリウム(消化管検査),有機ヨード製剤(主に脈管系の検査)などの陽性造影剤を用いることもある.
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