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書評「胸腹部腫瘍の放射線診断」
松浦 啓一
1
1九州大学
pp.665
発行日 1979年5月25日
Published Date 1979/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107677
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日本医学放射線学会は専門医制度を発足させて10年になる.医療制度が欧米のように確立されておらず,分担も定かでない状況のもとで,専門医を学会が認定したところで何のメリットもないではないかという批判は,放射線学会会員の中にすら根強く残っている.しかし,各分野に力のある専門医がいて,お互が力を合わせてこそ最も患者の利益になる診療ができるということは間違いない事実である.最近の放射線診断の進歩はめまぐるしい,すばらしい速度である.多岐にわたるのみでなく,各々の深さを増してきた.ぼんやりしていると,いつの間にかとり残されてしまう.何時でも最高のレベルの診断ができるようにするためには,絶えず補習をしてゆかねばならない.放射線学会には教育委員会があって注意を喚起してはいるが,実際にはなかなかうまくゆかないのである.大変なご苦労であるが,世話人となる良い人がいなくては続かない.この点,中部地方会は幸いだな,と思う.世話人であった松田忠義博士もそうであったが,木戸長一郎博士がまた良い.企画も宜しかったと思うが,このように1冊の本にまとめあげてくれている.日常の超多忙な臨床の中にあって,企画から本にするまでそのご苦労は大変であったと推察する.
内容は診断法の進歩と病変の鑑別診断に分かれている.診断法の進歩では,CTを含めての画像診断という立場より,各種検査法の意義について再検討を試みているように思われる.病変の鑑別診断の項では,胸部,消化管,肝,腎,胆道と各組織器管別に新しいX線診断の意義を癌との鑑別という観点より述べている.そして,最後に症例討議という項を設け,不足部分を補っているかにみえる.
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