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はじめに
日常臨床で利用されている臨床検査は,主治医の判断でオーダがなされる.しかし,個々の医師の判断で検査オーダがなされると,たくさんオーダする医師もいれば,ほとんどオーダしない医師もいる.これを患者側からみると,たくさんオーダする医師に対しては,たくさん検査をしてもらって安心するという患者もいれば,医療費が高くなることに不安を感じる患者もいる.一方,ほとんど検査をしない医師に対しては,もっときちんと検査をしてもらいたいのに,こんなに少ない検査で大丈夫だろうかと不安になる患者もいる.過剰な検査に対しては,保険点数上の包括化(いわゆるマルメ)があり抑制がかかるが,過少な検査に関しては,医療事故に関係する特殊なケースを除けば,問題となることはなかった.
2000年ごろから,診断別関連群/包括支払い方式(diagnosis related group/prospective payment system:DRG/PPS)や診断群別包括支払い(diagnosis procedure combination:DPC)など医療費の定額制導入の動きが高まってきており,この制度が医師の検査オーダに及ぼす影響が懸念された.すなわち,ある疾患で入院した患者に対し,支払われる医療費が定額になると,病院収益向上の点から検査を最小限に抑え,利益を生み出そうとする動きが出てくるのはある程度はやむを得ないが,患者にとっては,必要な検査を行ってもらえず,医療安全や医療の質の低下につながるのではないかという不安がもち上がってくる.
臨床検査は過剰であっても過少であってもいけない.適切かつ適正に臨床検査が行われてはじめて,安心・安全の医療が提供できる.これを受けて,日本臨床検査医学会では,研修医や一般医家を対象に,臨床検査を正しく利用していただきたいという理念から『臨床検査のガイドライン』を発刊し,その啓発活動を行ってきた.いくつかの前身を経て,2005年11月,『臨床検査のガイドライン2005/2006』を発刊し,約3年に一度改訂を行い,2012年12月,『臨床検査のガイドラインJSLM2012』(以下,本ガイドライン)(図1)を発刊した.同時に,本ガイドラインから要旨と図表のみを抜粋したポケット版も発刊し,これはある製薬会社の協力で全国の初期研修医に無料で配布されている.
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