臨床医からの質問に答える
心筋トロポニンが陽性の場合には,心筋傷害と診断してよいですか?
石井 潤一
1
1藤田保健衛生大学医学部臨床検査科
pp.154-158
発行日 2014年2月1日
Published Date 2014/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104178
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
心筋トロポニン(cardiac troponin)は心筋特異性が高いため,血中濃度が陽性(上昇)の場合には常に心筋傷害(myocardial injury)と診断できる.一方,トロポニン値は急性心筋梗塞(acute myocardial infarction,AMI)だけでなく,AMI以外のさまざまな病態に起因する心筋傷害によって上昇する.そのため,トロポニン値の上昇は必ずしもAMIに特異的ではない.
2009年7月に,トロポニンの検出感度を10倍以上改善した高感度測定が臨床導入された.高感度測定は低濃度域を正確に評価できるため,従来の測定の弱点であったAMI発症早期の診断感度を大幅に改善した1,2).一方,AMI以外の病態における心筋傷害をも鋭敏に検出するため,AMI診断における偽陽性を増やし,診断特異度を低下させた2).したがって,高感度測定使用時には,従来の測定以上に,トロポニン値の上昇がAMIに特異的ではないことを認識し,常にAMIとAMI以外の病態による心筋傷害との鑑別診断を行わなくてはならない.
本稿では,高感度測定を中心に,トロポニン測定結果の解釈のポイントについて概説する.高感度トロポニン値が上昇する病態を表1に示す3).
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.