増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論
2.生化学検査
5 心筋トロポニンI
石井 潤一
1
1藤田保健衛生大学大学院保健学研究科クリティカルケア学
pp.1130-1133
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101067
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はじめに
トロポニン複合体はトロポニンI,トロポニンTおよびトロポニンCの三つのサブユニットから構成されている.これらのサブユニットのうち,トロポニンIとトロポニンTとの心筋アイソフォーム,すなわち心筋トロポニンI(分子量22.5kDa)と心筋トロポニンT(分子量37kDa)に対する特異性の高い高感度測定系が日常臨床で用いられている.
心筋トロポニンIと心筋トロポニンTとはともに心筋特異性が高い.しかも,急性心筋梗塞(acute myocardial infarction,AMI)発症後の異常値を示す期間が長い(広い時間的diagnostic window)ため,クレアチンキナーゼ(creatine kinase,CK)やそのMBアイソザイム(CK-MB)などの従来の心筋傷害マーカーにより検出できなかった不安定狭心症患者の微小心筋傷害を診断することができる.
多数の臨床試験により,トロポニンIもしくはトロポニンTが上昇している急性冠症候群〔不安定狭心症(acute myocardial infarction,AMI)と虚血性突然死を包括した疾患群〕疑い患者は心電図で明らかなST上昇を認めなくても,心臓死の危険性が高い“高リスク群”であることが示されている1).
さらに,これらの臨床試験の成績をふまえて,2000年9月にAMIの診断基準が改定された2).この新しい診断基準によると,トロポニンIもしくはトロポニンTが上昇している急性冠症候群はすべてAMIと診断される.
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