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臨床化学
トロポニンT/Iが陽性ですが,明らかな心筋傷害は認めません.どのようなことが考えられますか?
石橋 みどり
1
1新東京病院臨床検査室
pp.360-361
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542202636
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トロポニン(Tn)測定の意義
トロポニン(Tn)は筋肉の収縮調節をつかさどるフィラメントを構成する蛋白複合体である.心筋トロポニン(cTn)は90%以上が心筋細胞の構造フィラメントに,約6%が可溶性成分として細胞質に存在する.心筋特異性が極めて高く,急性冠症候群(ACS)の診断に有用である.
cTnは2000年のESC/ACC急性心筋梗塞(AMI)診断の改定によってAMI診断基準に記載された.また,2012年からは「心筋梗塞の国際定義 第3版」1)において第1選択マーカーとして推奨されている.ACSの早期診断に有効で,高感度法では2時間未満の超急性期にも有用である(表1)2).他のマーカーと比較して発症後,長時間にわたって高値が継続するので,診断有用性が高い(図1).また,心不全患者の予後予測マーカーとしての有用性も報告されている3).
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