Laboratory Practice 〈微生物〉
PCR-based ORF typing法(POT法)の実施手順と注意点
鈴木 匡弘
1
1愛知県衛生研究所生物学部細菌研究室
pp.76-80
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104154
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
PCR-based ORF typing法(以下,POT法)はPCR(polymerase chain reaction)による細菌の分子疫学解析法である.POT法では,菌株間で保有状態に差異のある遺伝子の読み取り枠(open reading frame,ORF)をマルチプレックスPCRで検出し,その保有パターンによって遺伝子型を決定することで,検査した分離株が同一遺伝子型であるか否かを判定することができる1,2).バンドの有無によって遺伝子型を決めるため,制限酵素処理やシークエンス解析などの煩わしい操作は必要ない.現在までに黄色ブドウ球菌用および緑膿菌用が開発されている.
POT法はマルチプレックスPCRを利用した方法であるため,PCRを実施するための設備のみで,従来はパルスフィールドゲル電気泳動(pulse field gel electrophoresis,PFGE)法を要していた検査が実施できる.POT法の電気泳動像を見ると,一見複雑なバンドパターンに見えるが,バンドサイズが決まっており,バンドの有無で遺伝子型を決定可能である.実用上,十分な菌株識別能力を有し,院内感染疑い時における分子疫学解析ツールとして利用できる.
本稿では,実際にPOT法を実施する場合のポイントを中心に解説する.
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.