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B型肝炎の自然経過
出生時の垂直感染,あるいは乳幼児期の水平感染によりB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus,HBV)に感染すると,90%以上の確率で持続感染が成立する.当初は,HBe(hepatitis B envelope)抗原が陽性で肝機能が正常な無症候性キャリアになる.この時期はHBV DNAは高値だが肝炎は起こらない状態(免疫寛容期)であり治療は必要ない.成人期になると肝炎を発症し,85~90%の患者ではHBe抗原が消失してHBe抗体が出現し(セロコンバージョン),肝炎が鎮静化して非活動性キャリアになる.非活動性キャリアになっても再び肝炎を発症することがあるため(再活性化),セロコンバージョンは必ずしも治癒ではなく,再活性化を念頭に置いた経過観察が必要である.10~15%の患者では慢性肝炎が持続し,慢性肝炎からは年率2%で肝硬変に進行する(図1)1).
肝癌の発生率は,HBe抗原陰性の非活動性キャリアからは年率0.1~0.4%,慢性肝炎からは年率0.5~0.8%,肝硬変からは年率1.2~8.1%であり,患者がどの段階かを把握することは診療上非常に重要である.しかし,B型慢性肝炎ではALT(alanine aminotransferase)値が正常でも肝硬変に進展している症例があり,このような症例が経過観察から漏れてしまい肝癌を発症してから病院を受診することも決して稀ではない.肝生検は肝臓の線維化の程度を把握するうえで最も確実な検査だが,肝生検を行わなくても一般検査から肝線維化の進行した症例を同定することができれば,臨床的に極めて有用である.また,B型肝炎では肝硬変でないにもかかわらず,またガイドラインの定める治療適応基準に該当しない症例からも肝細胞癌が発生する.肝細胞癌発生のリスクが高い症例を簡単な臨床検査値から予測することができれば,治療が必要な症例を囲い込むことができる.そこで,データマイニング解析により一般検査から肝線維化の進行した症例や発癌リスクの高い症例を同定する方法を検討した.
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