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日本臨床検査自動化学会第37回大会が,9月28日(水)~30日(金)の3日間,パシフィコ横浜を会場として開かれました.大会長は杉浦哲朗教授(高知大学)で「先端医療を支える臨床検査―さらなる自動化への取り組み」をテーマに1,854名の参加者を迎え,連日熱心な討論が繰り広げられました.機器・試薬展示は例年通り,会場に隣接した展示ホールを使い日本臨床検査医学会との合同開催で行われました.出展は91社,入場者は7,043名(昨年は6,800名)とメーカーとユーザーとの情報交換の場として活況を呈していたようです.
今回私は,4つ企画されましたシンポジウムの中でシンポジウムⅣの「自動化検査部門におけるデータマイニング技術の活用」に参加しましたのでその内容について紹介します.私がデータマイニングという用語を知りましたのは2~3年位前で,おそらく多くの読者の方もその言葉の意味をご存じの方はまだ少ないのではないかと思われます.最初は,本シンポジウムの座長も務められました岡田正彦先生(新潟大学)から「データマイニングの手法」についてお話を伺いました.データマイニングとは,一般には膨大なデータからルールやパターンを抽出し,その中から有用な知識を発見する行為を意味することをいうそうですが,実は明確な定義がないことが特徴の一つでもあるとのことでした.具体例として米国のビジネス界のお話と岡田先生が開発された「相関重みつきエントロピー法」の研究事例が紹介されました.2題目は市原清志先生(山口大学)から「情報の可視化がもたらすマイニング効果」について,市原先生が開発された汎用統計ソフトStatFlexの機能について具体例をスライド上で実際に動かして示されました.また,データマイニングを行うに当たっては情報の可視化とその技術の開発が重要であると強調されました.3題目は岡田先生といっしょに座長を務められました片岡浩巳先生(高知大学検査部)から「蛋白電気泳動波形と血球粒度を対象としたデータマイニング技術の活用」について,実際の臨床検査の応用事例として血清蛋白分画泳動波形や白血球粒度の多次元データを対象として示されました.この中で,高速類似検索システムを用いることで膨大なデータの中から迅速にルールやパターンを抽出しそれらの関連性を体系化できることを示され,今後の臨床検査の病態解析研究に欠かせないツールとして利用される可能性について述べられました.4題目は,稲田政則先生(虎の門病院検査部)から「QC Chart Mining」について実践的に精度保証に適用した事例が紹介されました.QC Chart Miningとは,「管理試料の時系列観測データから特徴的なパターンを抽出し,長期的かつ技術評価の観点で,工程異常の発見と問題解析を行う行動」と定義され,内部精度管理データを対象とした解析例が示されました.このシンポジウムの最後は,横井英人先生(香川大学)から「データマイニング研究の最前線・アクティブマイニング」について文部科学省の特定領域研究「情報洪水時代におけるアクティブマイニングの実現」プロジェクト(2001~2005)の研究成果についてお話を伺いました.本研究は肝疾患患者を対象とした医療情報を用い,理・工学分野の研究者がデータマイニング実施したものであり,医学領域についての知識を補完することに非常に苦労された実例を示されました.また,研究中困難であった問題として,検査データに関しては約20年間に渡るデータを用いたため,検査機器,試薬変更時のデータの換算,統合について触れられ,今後このような研究を行うにあたって重要なことはデータベースの設計や後処理を念頭に置いた情報の保存に十分留意する必要があるなど幾つかの課題が述べられました.最後の全体討論からは,本日示されたデータマイニング技術を臨床検査分野に取り入れることにより,データベースに蓄積された膨大なデータをもっと有効に活用することで,今後よりアクティブな診療支援を行える可能性を感じることが出来ました.いずれ本誌においても「データマイニング」の特集が組まれるようですので,そこで改めて勉強してみようと思っています.
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