トピックス
本態性高血圧症の疾患感受性遺伝子
中山 智祥
1
1日本大学医学部病態病理学系臨床検査医学分野
pp.456-460
発行日 2012年5月1日
Published Date 2012/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103542
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
まず,“高血圧”と“高血圧症”という用語について説明する.欧米では“high blood pressure”と“hypertension”との区別があまりないのと同様,わが国でも高血圧と高血圧症とは区別されていない.ただし,内外とも後者が専門用語として認識されている感がある.本稿ではストレスや運動などで一時的に血圧が高い状態とは異なり,安静時血圧が高い状態が持続的に継続することによって全身の臓器障害を起こす疾患として“高血圧症”という用語を用いることにする.
高血圧症は80~90%が原因不明の本態性高血圧症であり,腎・内分泌疾患などによって起こる二次性高血圧症の除外から診断される.稀に高血圧症を示す単一遺伝子疾患(遺伝性高血圧症)も存在する(表1).わが国の死亡原因の2,3位は脳血管疾患,心疾患であるが,2,000万人以上存在する本態性高血圧症はこれらの危険因子であるため社会的に大きな問題となっている.2001年以降ポストゲノム時代に入りゲノム情報を疾患遺伝子の同定に利用することが可能となったが,遺伝要因が強いとされる本態性高血圧症の明らかな感受性遺伝子は同定されていない.本稿では本態性高血圧症感受性遺伝子単離についての変遷,戦略,問題点,展望など筆者らのデータも含めて紹介する.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.