増刊号 緊急報告すべき検査結果のすべて―すぐに使えるパニック値事典
Ⅶ 病理・細胞診
病理・細胞診の“パニック値”
和仁 洋治
1
1倉敷中央病院病理検査科
pp.944-948
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103321
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検査の概要
病理検査は組織診断,細胞診断を主とし,その判断において主観が多く介在し,生化学分析にみられるように客観的な数値としての異常値は存在せず,いわゆるパニック値と表現されるものは通常存在しない.しかも,術中迅速診断や昨今取り入れている施設も出てきているone day pathology1)を除けば,検体採取から診断に至るプロセスが数時間以内になされることはほとんどなく,時間的緊急性も少ないのが実情である.
しかしながら,病理検査においては組織,細胞形態を認知し,所見をとり,それに医学的意義づけ,解釈するという高度な判断がなされ,その病理診断に基づいて多くの場合治療が行われているのが実情である.つまり“最後の診断”という性格がある以上,その診断そのものの正当性が揺らぐ場合に,臨床現場に与えるインパクトは大きく,しばしば“過去”の診断が時間を越えて“現在”の切実な問題となってくるのである.その影響度,深刻度が高い状態が,まさに“パニック”に相当する事象といっても過言ではない.
そこで,本稿では臨床医の想定外の臨床的影響度の高い病理検査所見が得られた場合を含めて,病理検査における“パニック”的事象と定義して,これらの問題を扱ってみたい.民間の急性期大規模病院に勤務する筆者の,決して学問的ではないが,失敗を含めた経験や日々痛感する問題を中心に述べ,病理診断や病理検査に対する読者のより深い理解や共感が得られれば幸いに思う.
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