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増刊号 緊急報告すべき検査結果のすべて―すぐに使えるパニック値事典
Ⅵ 一般
髄液検査〔CSF検査〕
cerebrospinal fluid test
澤井 摂
1
1千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学
pp.939-942
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103320
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検査の概要
髄液は脳や脊髄を覆い,衝撃からの保護,脳への栄養供給,代謝産物の運搬をする.血液と髄液の間には血液-脳関門があり,物質移行に制限があるが,神経疾患では血液-脳関門の破綻や髄液腔内への細胞浸潤などが起こり,髄液検査の異常値となる.
髄液検査は特に中枢神経感染症(髄膜炎,脳炎など)の診断に有用である.検査結果を組み合わせて起因する病原体を推測する(表).
2010年に当院で756例の髄液一般検査が施行されたが,細胞数の分布(図1)で正常例が全体の71.7%と目立つ.これは,検査が中枢神経感染症の診断以外に多く用いられたことを意味する.中枢神経感染症以外の髄液検査の適応は,多発性硬化症,Guillain-Barré症候群,CNS(central nervous system)ループス,神経Behçet病,神経サルコイドーシスなどの炎症性疾患〔細胞蛋白解離,オリゴクローナルバンド,IgG index,IL(interleukin)-6,アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme,ACE)など〕,中枢神経悪性腫瘍,転移性腫瘍など(腫瘍マーカー,髄液細胞診),くも膜下出血を疑う臨床経過であるが,頭部CTで異常がはっきりしない場合(血性髄液)がある.また,プリオン病(14-3-3蛋白)やミトコンドリア病(乳酸,ピルビン酸)の診断にも用いる.最近ではAlzheimer病の診断(βアミロイド1-42,リン酸化タウ)にも有用とされる.
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