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概 説
pentraxin3は1992年,Breviarioらによってinterleukin(IL)-1誘導遺伝子として初めて報告された(この時点ではpentraxin3と言われていた)1).彼らはヒト臍帯静脈内皮細胞をIL-1で刺激し得られたcDNAライブラリーからpentraxin3を同定した.pentraxin3はCRP(C-reactive protein)と同じpentraxin superfamilyに属する急性炎症性反応蛋白であり,同ファミリーはカルボキシル基末に共通のpentraxinドメインをもつ.CRPやSAP(serum amyroid protein)はshort pentraxinとして属している(図1).pentraxin3はアミノ基末に特有のドメインをもつが,CRPと最大に異なる点はその発現分布特異性にある.炎症刺激〔Toll like受容体アゴニスト,TNF(tumor necrosis factor)α,IL-1βなど〕により急速にマクロファージ,樹状細胞,線維芽細胞,内皮細胞でその発現が誘導される.
一方,CRPと異なり,肝臓にはその発現はほとんどない2).つまり動脈硬化巣に存在する細胞で特異的に発現している.さらに興味深い所見としては,好中球内ではpentraxin3は豊富に存在する(mRNAレベルの発現は前骨髄球や骨髄球,後骨髄球など好中球の前駆細胞にしかない).炎症刺激により放出されたpentraxin3の一部は好中球細胞周囲にある'NETs(neutrophil extracellular traps)'(突出したDNAによって構成されている)内に局在し,病原菌を捕獲する3).この好中球での動態,すなわち,他の細胞では炎症刺激によりmRNAの発現誘導がかかるのに対し,好中球ではすでに貯蔵していた蛋白が放出されるということは,pentraxin3値の測定は炎症刺激直後に,かつ定量的に行える可能性があり,理想的なバイオマーカーの可能性が高い.なお心筋に関しては,当初発現している,と報告があったが,東京大学先端科学技術研究センターシステム生物医学ラボラトリーがweb(http://www.lsbm.org)で公開しているジーンチップのデータでも心筋のmRNA発現はほとんど認めておらず,3年前のSalio,Mantovaniらの論文では発現していないとされている(発現していたのは心筋に浸潤していた好中球によると論じられている)4).
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