疾患と検査値の推移
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対するヘリコバクターピロリ菌除菌療法
藤村 欣吾
1
1広島国際大学薬学部病態治療学講座
pp.31-36
発行日 2011年1月1日
Published Date 2011/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103023
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura,ITP)は後天性の血小板減少症で,皮膚や粘膜の紫斑を主体とする出血症状を主徴とする疾患である.血小板膜に対する抗体が関与して発症する自己免疫疾患の一つで,慢性に経過するいわゆる慢性型は成人に多く,特に女性が男性の2.5倍多い.わが国における最近の調査では年齢分布は男女とも20歳頃から増加し始め,51~70歳にピークを認めている.
新患発生率は人口10万人当たり2.2人(2007年度)で,発症機序の解明,診断・治療法の確立を目指して厚生労働省の難病指定を受けている疾患である.
治療として副腎皮質ステロイドを中心とした免疫抑制療法や血小板破壊場所,ならびに抗体産生の中心的役割を果たす脾臓の除去(摘脾療法)が定着している.これらによる全体的な治療成績は,約40%が完全寛解,日常生活にはなんら支障がないが軽度の血小板数減少が持続する部分寛解と考えられる症例が約40%,血小板減少や出血傾向に対するなんらかの治療介入が必要ないわゆる難治症例が約20%であり難治性疾患の所以である.
1998年Gasbarriniら1)によって,ヘリコバクターピロリ菌(以下,ピロリ菌)陽性ITP症例は除菌療法群において未除菌群に比し有意に血小板数が増加することが報告された.以来,ピロリ菌陽性ITP症例に対して除菌療法が世界各地で行われるようになり,わが国でも今年6月から本疾患に対する除菌療法が保険適用になっている.以下,ITPとピロリ除菌療法について述べる.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.