増刊号 免疫反応と臨床検査2010
V 生化学
G ホルモン
2 インスリンとその関連項目
小口 修司
1
1慶應義塾大学病院中央臨床検査部
pp.939-944
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102927
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インスリン・C-ペプチド・プロインスリン
インスリンは1921年にBantingとBestによって発見されたペプチドホルモンである.ヒトインスリン遺伝子は第11染色体短腕に存在する1,430塩基対で,三つのエクソンと二つのイントロンからなる.β細胞核内のインスリンDNAの遺伝情報はセントラルドグマの流れに従い,細胞質内でアミノ酸に翻訳されプレプロインスリンとなる.疎面小胞体内に取り込まれたプレプロインスリンはプレペプチド部分が除去,ゴルジ(Golgi)装置に転送され,インスリンの前駆物質であるプロインスリンとなる.プロインスリンは,顆粒内にてendopeptidase(PC2,PC3/PC1)およびcarboxypeptidase Hの関与によって,その中間にあるそれぞれ2個の塩基性アミノ酸(Arg・Arg,Lys・Arg)の部分の両端で切断され,インスリンとC-ペプチドとなる1).つまり,1モルのプロインスリンからインスリン1モルとC-ペプチド1モルがつくられることになる.それらのアミノ酸数と分子量は,プロインスリンが86個で約9,000,C-ペプチドが31個で約3,000であり,インスリンは21個のアミノ酸からなるA鎖と30個のアミノ酸からなるB鎖が二つのS-S結合にて構成される分子量約6,000のペプチドホルモンである.なお,インスリンとC-ペプチドは血中へ放出されるが,プロインスリンの一部はそのままインタクトプロインスリンとして,または分解過程で生じた中間生成物であるスプリットプロインスリンの形で血中に残存することも知られている(図1).
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