検査ファイル
項目●抗菌薬関連腸炎
安達 桂子
1
1東京都多摩老人医療センター臨床病理科
pp.1062-1063
発行日 1991年11月1日
Published Date 1991/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900871
- 有料閲覧
- 文献概要
[1]抗菌薬関連腸炎の変遷
ヒトの正常腸内細菌叢はBacteroides,Eubacterium,Peptostreptococcus,Bifidobacteriumなどの嫌気性菌が主要構成菌種をなしており,糞便1g中の菌数は1010〜11CFU/gで,E. coliはわずか106〜8CFU/gにすぎない.この腸内細菌叢を変動させる要因として最も大きいのが抗菌薬投与で,腹痛,軟便,下痢などの症状がみられる.その多くは投薬中止によって軽快するが,なかには高熱,白血球増多,電解質異常などを伴った重症型をたどる例もある.
抗菌薬関連腸炎は時代とともにわずかながら変化がみられる.1950年代には,腸管内の菌交代現象として異常増殖した多剤耐性Staphylococcus aureusの毒素によって偽膜性小・大腸炎を起こすことが報告された.その後,1960年代に入り,S. aureusに有効なβ-lactamase抵抗性ペニシリン,セフェム剤が開発されるに至って,S. aureasの偽膜性陽炎はまれになった.1970年代には嫌気性菌感染症が注目されはじめ,嫌気性菌に強い感受性を示すリンコマイシンやクリンダマイシンの多用に伴いS. aureusとは無関係の偽膜性腸炎の発生頻度が高まった.1978年,Bartlettらはその成因としてClostridium difficileの毒素が関与していることを明らかにした.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.