技術講座 生化学
インスリンの定量
小口 修司
1
1慶応大学病院中央検査部
pp.419-424
発行日 1982年5月1日
Published Date 1982/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202495
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インスリンは,A鎖とB鎖の2種のポリペプチドがS-Sにより結合した分子量6,000の比較的小さいペプチドホルモンである.それは膵ラ氏島β細胞から分泌され,α細胞より分泌されるグルカゴンに拮抗し血糖の調節機構に重要な役割を果たしている.このバランスがくずれると糖尿病が引きおこされてくる.血糖低下作用のみならず脂肪合成,蛋白同化作用の促進,その他広い作用を持っている.
インスリンの測定は真性糖尿病,二次性糖尿病の鑑別診断上,血糖測定と並んで重要な検査である.1959年,Berson & Yalow1)により開発されたインスリンのラジオイムノアッセイ(RIA)は特異性に優れ,高感度でもあり,以後,インスリン測定に限らず各種のペプチドホルモン,ステロイドホルモン,その他の非ホルモン物質などの定量の分野にまで応用され発展してきた.インスリンの測定法には,このRIAを含めた免疫学的測定法の他に生物学的測定法,受容体を利用した測定法などがあるが,現在特殊な目的をもった実験の場合を除きRIAが一般に広く用いられている.ここではRIAによるインスリン測定の技術解説をするとともに,データ評価を行う上での注意点に重きをおいて解説したい.
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