増刊号 免疫反応と臨床検査2010
III 輸血
4 輸血関連急性肺障害と輸血関連循環負荷の診断
岡崎 仁
1
1日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所
pp.861-865
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102909
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はじめに
輸血関連急性肺障害(transfusion-related acute lung injury,TRALI)と輸血関連循環負荷(transfusion-associated circulatory overload,TACO),この二つは輸血中もしくは輸血後に呼吸困難・呼吸不全を呈するという点において,臨床上重要な病態である.発症機序は明らかに異なるものであるが,呼吸困難,X線写真上の肺浸潤影(肺水腫)などの症候が二つの病態に共通するためにしばしば混同されている.TRALIのConsensus Conferenceの診断基準では,circulatory overloadはTRALIから除外するという規定があるため,診断基準上は同時に二つの病態が存在することはないのであるが,TACOの診断基準が曖昧で,臨床上も検査の値でも鑑別診断が難しいため,判断に迷うことが多いと思われる.実際,TRALIとTACOは共存するという論調の論文も多く,混乱を招いている.TRALIは血管内水分量が減少している場合が多く,TACOは逆に血管内水分量が増加しているため,治療上においても鑑別診断は重要となってくる.
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