増刊号 免疫反応と臨床検査2010
III 輸血
3 妊娠と輸血関連検査
川畑 絹代
1
,
大戸 斉
1
1福島県立医科大学輸血・移植免疫部
pp.857-860
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102908
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
血液型不適合妊娠
妊娠した女性の体内には,胎児という自分とは異なる父親由来の抗原を保有する個体が存在する.自分と異なる血液抗原が母体に曝露されると,母体は時にそれに対する抗体を産生し,排除しようとする免疫反応が起きる.これが血液型不適合妊娠の基本的機序である.母親血と胎児血は胎盤によって隔てられているが,実際には高頻度で少量の胎児血液が母体循環に流入している1).母児間輸血(feto-maternal transfusion,FMT)と呼ばれ,母体感作の大きな原因と考えられている.妊娠や輸血によって母体内で産生されたIgG型の抗体は胎盤を通過し,対応抗原を有する胎児血球と結合する.抗体が結合した胎児血球は胎児の単球貪食系で捕捉・破壊され,血球成分の減少と破壊に伴う影響が出現する.破壊される血球成分としては,赤血球,白血球,血小板があり,胎児新生児溶血性疾患(hemolytic disease of the fetus and the newborn,HDFN),新生児同種免疫性顆粒球減少症(neonatal alloimmune neutropenia,NAIN),新生児同種免疫性血小板減少症(neonatal alloimmune thrombocytopenia,NAIT)と呼ばれる.
本稿では,胎児新生児溶血性疾患と関連検査について解説する.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.