増刊号 免疫反応と臨床検査2010
IV 感染症
A 感染症診断における免疫学的検査法の進歩
感染症診断における免疫学的検査法の進歩
舘田 一博
1
1東邦大学医学部微生物・感染症学講座
pp.868-869
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102910
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感染症検査の概説
感染症の診断は,臨床症状や経過に加え患者の年齢・性別,既往歴から感染症を疑うことから始まる.感染症の可能性が高いと判断される場合には,感染部位はどこか,その原因病原体は何かを推定し,それら情報をもとに適切な検査法を選択・実施することになる.感染症検査としては,塗抹鏡検検査,培養検査,血清抗体価,抗原検出,遺伝子診断法が重要であり,特に免疫学的検査法としては後二者が重要となる.臨床現場においては,病原体ごとの検査法の長所と短所,その特徴をよく理解したうえで検査を選択することが必要である.原因の判明しない症例では,適切な検査が実施されていないことが多く,また呼吸器検体などでは適切な検体(常在菌による汚染が少ない検体)が採取・提出されていない症例も散見される.
近年,感染症の迅速診断法における新しい展開として,免疫クロマトグラフィ法などを用いた病原体抗原の迅速検出法が注目されている.本法は特別な機器を用いることなく,15~20分間で確定診断を得ることができる方法であり,「いつでも,どこでも,誰にでも実施可能な検査で,しかもすぐに結果がわかる」という理想的検査法の1つとなっている.しかし,肺炎球菌尿中抗原検査にみられるように,小児における偽陽性の問題など結果の解釈に注意しなければならないポイントもある.本稿では免疫学的検査法を用いた感染症診断に焦点を当て,病原体抗原検出法,遺伝子診断法を中心に概説する.
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