技術講座 病理
―シリーズ:穿刺細胞診の手技と読み方―2.乳腺細胞診断自動スコアリングシステム
北村 隆司
1
,
土屋 眞一
2
1昭和大学藤が丘病院病院病理部
2日本医科大学付属病院病理部
pp.1357-1364
発行日 2009年11月1日
Published Date 2009/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102670
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新しい知見
乳腺穿刺細胞診は手技の簡便さ,迅速性,低価格などの理由から,腫瘤形成性病変の病理学的検査法の一つとして汎用されている.その診断は細胞異型や構造異型,背景などを総合して判定されるが,これらの評価基準は個々の診断者で異なる.このため,結果に個人差や施設・地域間格差が生じてくることは否定できない.また,形態学的診断は経験に左右されやすく,より多くの乳癌症例を経験できる施設では,異型に乏しい乳癌を正確に診断することは比較的容易である.しかし,年間を通じてあまり症例を経験できない施設では,良・悪性診断に困難を覚えることがあり,ひいては“鑑別困難”の判定区分が多くなってくる.さらに,多数の症例を経験できる施設にあっても,検体の急激な増加に伴って,常に一定の基準で判定できるかの問題が提起されている.この改善のためには,診断上での必要な所見を限りなく網羅し,その標準的スコア化の設定が急務と考える.われわれは乳腺穿刺細胞診の診断基準から,おおよそ40項目をピックアップし,所見の“有無”および“程度”などに応じてあらかじめ設定したスコア値(悪性:加点,良性:減点方式)を付け,アプリケーションソフトを用いて総合的に集積し判定を行う“乳腺細胞診断自動スコアリングシステム”を考案した.本システムは検者を取り巻く環境に左右されることなく,不変的かつ再現性ある診断が構築でき,加えて細胞診の教育・啓蒙の普及や地域・施設間格差を減少させる利点がある.近年,乳腺細胞診にかかわる医療係争が急増している.“正確な診断は的確な治療の第1歩である”という医療側の願い,さらには患者側の利益に少しでも貢献できれば幸甚である.
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