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髄液中のアポリポ蛋白Eの臨床的意義
山内 一由
1
1筑波大学大学院人間総合科学研究科臨床医学系
pp.866-868
発行日 2009年9月1日
Published Date 2009/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102540
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■髄液中に存在する中枢神経組織由来のアポリポ蛋白E
1 . アポリポ蛋白Eとは
アポリポ蛋白(アポ)Eは299個のアミノ酸からなる分子量約34kDaの糖蛋白であり,低比重リポ蛋白(low density lipoprotein,LDL)リセプターあるいはLDLリセプター関連蛋白(LDL receptor related protein)のリガンド蛋白として脂質の輸送および細胞内への取り込みといった機能を担っている1).一般的に,アポEには独立した対立遺伝子(ε2,ε3,ε4)によってコードされるアポE2(Cys112,Cys158),アポE3(Cys112,Arg158),アポE4(Arg112,Arg158)の3種類のアイソフォームが存在し,それらの組み合わせによって,ホモ接合体3種類(アポE2/E2,E3/E3,E4/E4),ヘテロ接合体3種類(アポE2/E3,E2/E4,E3/E4),計6種類の表現型(フェノタイプ)が存在する.
アポEの主要な産生臓器は肝臓であるが,アストロサイトやグリア細胞をはじめとする脳神経組織でも豊富に産生され,髄液中の主要アポ蛋白として存在する2).脳神経組織由来の髄液中のアポEは体循環系のアポE,すなわち,肝臓由来のアポEと完全に独立しており脳血液関門(blood-brain barrier)を通過しない.このことは,肝臓移植後の患者で血中のアポEフェノタイプはドナー型に変わったのに対し,髄液中のアポEのフェノタイプは移植前と変化していなかったというLintonら3)の知見が裏付けている.
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