技術講座 生化学
―ホルモンの測定シリーズ・6 甲状腺・副甲状腺系:4―サイログロブリン(Tg),抗サイログロブリン抗体(TgAb),抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)
池田 斉
1
1埼玉医科大学病院健康管理センター
pp.793-797
発行日 2009年9月1日
Published Date 2009/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102521
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新しい知見
サイログロブリン(thyroglobulin,Tg)は,甲状腺濾胞細胞で作られる甲状腺特異的な糖蛋白である.血中のTg測定により,甲状腺癌の手術後の経過フォロー,術後再発や転移の診断に役立つ.一方,Tg低値の疾患(現在の測定では感度が十分でないため,健常人との鑑別はできないが)として先天性Tg合成障害が注目されている.Tg合成障害は,先天性甲状腺機能低下症の原因となり甲状腺腫を有することが多く,主にTgの遺伝子異常によって起こる.発症頻度は,67,000人に1人で常染色体劣性遺伝である.わが国では39種以上のTg遺伝子異常が報告されている.甲状腺自己抗体として,抗Tg抗体,抗TPO抗体があるが,自己免疫性甲状腺疾患であるバセドウ病(Basedow's disease),橋本病(慢性甲状腺炎)の診断に必須である.両者とも,以前は凝集法による半定量法(サイロイドテスト,マイクロゾームテスト)で行われていたが,現在では,Tgや甲状腺ペルオキシダーゼ(thyroid peroxidase,TPO)を標識抗原としたラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay,RIA),酵素免疫測定法(enzyme immunoassay,EIA)などの定量法で測定されている.これらは従来法より感度,特異性ともに格段に向上しており,特に橋本病の診断に寄与している.
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