映画に学ぶ疾患
「男と女」―恋の遺伝子
安東 由喜雄
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部病態情報解析学分野
pp.280
発行日 2010年3月15日
Published Date 2010/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102264
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ドラマ「篤姫」のおかげで,大奥という特殊な世界を垣間見ることができたが,そこには,将軍の世継ぎを効率的に残すための独特のしきたりがあった.正室といえども三十歳を過ぎると将軍と夜をともにすることを禁止する「おしと寝禁止」という制度である.世継ぎを残すことを至上命題にしている大奥でも,生物が進化の過程で獲得した,多様で優秀な遺伝子をもつ子孫を残そうとする「巧妙な手段」が活用されていた.この仕組みにより,高齢出産によって起こる遺伝子変異,染色体異常などの頻度も低くなる可能性がある.
NHK特集「女と男」は進化の過程で生まれた男と女の違いを大胆に説明していて興味深かった.ペンシルベニア大学での脳の男女差に関する研究によると,激しい恋に落ちると脳の活性化する「恋の中枢」がそれぞれで違うという.男は恋をすると,腹側被蓋野のドーパミンを神経伝達物質とする部位が活発に働くようになる.この部分の脳は学習や快感を司る中枢でもあり,活性化され続けると反復を望む気持ちが湧き上がるらしい.まさに男が恋愛の最中に性的衝動を繰り返し望むようになる理由がここにある.一方,女は記憶に最も関係している脳の中枢,帯状回が活性化される.こうした違いが,男女の愛の形態を違ったものにするのであろう.
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